産油国に絡む戦争は食品価格を押し上げる

 近年、原油相場は高止まりしています。2022年の短期的な急上昇の後、反落したため「安くなった」と受け止めた関係者は多いようですが、実際のところ、反落は短期で終わり、高止まりが続いています。このおよそ1年半の間、原油相場は80ドルを挟んだ上下10数ドルのレンジ相場で高止まりしています。

 今回の中東情勢悪化は、原油相場が長期視点の高止まり状態にある中で起きました。このため、原油高がもたらす負の影響が長引く懸念が強まっています。以下は、原油高がもたらす影響をまとめたものです。

図:産油国に絡む戦争勃発を起点とした食品価格高発生までの流れ

出所:筆者作成

 足元、中東情勢が悪化しているだけでなく、ウクライナとロシアの戦争が長期化しています。どちらも、世界屈指の産油国が絡んだ戦争です。こうした戦争は世界的な原油の供給減少懸念を強め、「経済の血液」とも言われる原油の相場に強い上昇圧力をかけます。

 原油相場が上昇すると、各種コストが上昇します。輸送、材料、電気、燃料などです。そしてそれらのコストが上昇すると、物価高(インフレ)が進み、それに見合った賃金を払う企業が増えて人件費が上昇します。こうした流れが、スーパーマーケットなどで売られている食品の価格を上昇させます。

 日本を襲っている物価高(インフレ)は、景気が良くて需要が旺盛であるために起きているデマンドプル(需要けん引)型だとは言いにくいでしょう。肌感覚で景気が良いと感じる人は多くないはずです。足元の物価高は、長期化している原油高が各種コストを上昇させて起きているコストプッシュ(原材料高)型なのです。

 中東情勢のさらなる悪化、ウクライナ・ロシアの戦争のさらなる長期化が見られれば、原油相場は高止まり、場合によってはさらなる高騰もあり得るでしょう。先述の通り、中東情勢が異例ずくめであることを考えれば、今後も原油相場の上振れ、それによるさらなる食品価格高には警戒しなければなりません。