それでも株高は再開する?企業業績への期待が滲む動きも…

 ただし、その米国株市場の主要株価指数(NYダウ、S&P500、ナスダック)の動きを見ると、一部では株価の再浮上を期待させる兆しもあり、指数どうしの間には、かなりの温度差が生じています。

図3 米NYダウ(日足)の多重移動平均線とMACDの動き(2024年4月12日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 先週の米主要株価3指数でいちばん弱かったのがダウ・ジョーンズ工業株平均株価(NYダウ)です。先週末のNYダウは前週末比で約920ドル(2.37%)下落しました。

 上の図3では、前回のレポートでも紹介した「多重移動平均線」をチャート上に描いていますが、前週に下抜けた移動平均線の束へ戻る格好で先週の取引が始まったものの、その後は反落する展開となり、50日移動平均線や、下段のMACDも「0ドル」ラインを下抜けるなど、下方向への意識を強めています。

図4 米S&P500(日足)の多重移動平均線とMACDの動き(2024年4月12日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 続いてはS&P500種指数(S&P500)です。こちらは前週末比で81p(1.56%)安でした。

 NYダウと同様に週間で下落しましたが、下落率はNYダウよりも小さく、50日移動平均線がまだサポートとして機能しています。下段のMACDも下向きではあるものの、「0p」ラインまでは下がっていません。

 50日移動平均線から株価が反発し、多重移動平均線の束を上抜けトライできるかが、S&P500の今週の焦点になります。

図5 米ナスダック(日足)の多重移動平均線とMACDの動き(2024年4月12日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 そして、三つ目のナスダック総合指数(ナスダック)が、日本株を含めた株価上昇のカギを握ることになるかもしれません。

 先週のナスダックもNYダウやS&P500と同様に、週間ベースで下落しましたが、前週末比で73p(0.45%)安と小さな下落にとどまっており、3指数の中で最もしっかりしていたと言えます。

 さらに、11日(木)の取引では大きく株価が上昇し、この日のローソク足が多重移動平均線の束を上抜けたほか、終値ベースでの最高値を更新するなど、強い動きを見せる場面もありました。

 このように、先週のナスダックの値動きを支えたのは、大手のIT・ハイテクおよび半導体関連企業などをはじめとする、グロース(成長)株の動きです。

 チャートの数が多くなってしまうため今回のレポートで紹介はしませんが、いわゆる「マグニフィセント・セブン」に代表される銘柄(アルファベットやアップル、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、テスラ、エヌビディア)のうち、テスラ以外の銘柄の株価は週を通じて堅調さを保っていました。

 アルファベットとアマゾンについては、高値を更新する場面もありました。

 現在のマーケットでは、グロース企業に対する業績期待は高く、今年1月の時のように、再び株価の再上昇を支援する可能性がありそうです。

 その企業業績という観点でいえば、米国では日本よりも一足早く決算シーズン入りします。

 今週は、ゴールドマン・サックス・グループ(GS)バンク・オブ・アメリカ(BAC)モルガン・スタンレー(MS)などの大手金融機関をはじめ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)プロクター・アンド・ギャンブル(PG)などの消費財関連、米ビッグテックの一角であるネットフリックス(NFLX)、そして半導体関連ではTSMC:タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)など、注目企業の決算が相次ぎます。

 この中でも、18日(木)に発表されるTSMCの決算が株式市場の注目を集めると思われます。半導体需要の動向や業績見通し、先日の台湾地震の影響などのチェックポイントは多く、相場に方向感をもたらす可能性があります。

地政学リスクは折角の株高期待を打ち消してしまうのか?

 その一方で、先週末あたりから中東情勢への警戒感が浮上してきているのが気がかりです。12日(金)の米国株市場が下落したのは、イスラエルに対するイランの報復が迫っているとの懸念が高まったことがきっかけとなりました。

 地政学的情勢の緊迫化によって、景況感と金融政策の思惑を中心に動いていた、これまでの米国金利(債券価格)に新たな変動要因が加わることになるほか、原油価格や金価格の動向にも注視する必要が出てきました。

 さらに、政治を含む地政学的な相場材料については、不安を先取りする動きはあっても、中期的な見通しを市場が事前に織り込むことが難しく、状況の変化に応じて動くことになるため、今週の株式市場は先週よりも不透明感を増しています。

 実は、先週末12日(金)の日本株市場の取引が終了した時点では、先ほども見てきたように、米ナスダックの値動きなどから、「目先はグロース株を中心に意外と株価が上昇する展開」を想定していたのですが、きな臭くなってきた中東情勢を受けて、弱めのシナリオに再考した格好です。

 仮に今週の株式市場が上昇したとしても、高値を更新できるほどの勢いが出るかは微妙であるほか、不透明感が強まる中では、ある程度株価が上昇したところで利益確定売りが出やすくなったり、株価上昇の賞味期限が短くなったりしてしまうことも考えられます。

 したがって、今週は「市場のムードがいつ急変してもおかしくない」ぐらいの姿勢で取引に臨むのが良いのかもしれません。