株式相場が急落したときにやってはいけないこと2:慌てて株式を買ってもいけない

 日本取引所グループが毎週公表する「投資部門別売買状況」を見ると、個人投資家の売買動向は相場が上昇しているさなかの局面よりも、相場が上昇した後に下落して調整し始めた際に、逆張りで購入する金額が増える傾向があることが見てとれます。

 株式相場が下落してから買付することには何の問題もありませんし、むしろ下がっている時こそ投資機会を待っていた人にとっては安いタイミングで買えるチャンスといえます。

 中には株式相場が大きく下落したらすぐに買付をしようとする方がでてきますが、まだどのぐらい株価が調整するか判断しづらい状況で買付をすることはやや性急な判断と言わざるを得ません。

 相場の格言で「落ちてくるナイフはつかむな」というものがあります。意味は「株価が急落したときの投資は落ちてくるナイフをつかむようなもので、きちんとナイフ(=株価)が床に落ちてから、つまり底を打ったのを確認してから投資すべき」という格言です。

 株式投資で売買をする場合には、慌てて売買しても良い投資とはいえません。損益は結果論ですが、継続して成果を出すことは困難でしょう。

 資産形成で積立投資をしている人の場合でも、相場が大きく下がってくると追加で買付をしようか検討される方もでてきます。しかし、積立投資では機械的に売買することが重要なので、価格変動で売買を検討するなら別の投資と切り分けて投資をすることをおすすめします。

株式相場が急落したときにやってはいけないこと3:見て見ぬふりをしてはいけない

 株式相場が急落して自分が投資している資産の評価が下落しているとき、一番気楽な方法は何も気にせずに放置しておくことです。一時的な下落で問題ないと考えているならそれも一つの投資判断ですし、慌てて売買するよりはよいと思います。

 ただ、下落した理由を確認せずにただ見て見ぬふりをして放っておくことはよくありません。どうして下落したのか、どのくらい下落しそうなのかをチェックして、その上で投資判断をする必要があります。

 下落した後すぐには、投資判断をするための情報が足りなかったり、追加で悪材料がでてきたりする場合もあります。日々の細かい情報までチェックすることはありませんが、自分の投資資産に関係が深い情報はチェックする習慣を身に付けましょう。

 相場の急落時には投資資産をそのままで継続する、売却する、一部売却をする、買い増しをするなどさまざまな選択肢が現れます。必ず売買をしないわけでもありませんし、長期投資なら基本的に売買する必要はないでしょう。

 ただ投資資産の下落に不安がでてくるようなら、許容できるリスク(価格変動)をこえている場合があります。その際には投資金額を減らしたり、現投資資産と比較してリスクの低い商品へ切り替えたりすることを検討しましょう。

相場の急落時には、事前の備えが大切

株式投資のリスクに対応するには投資金額とタイミングの調整を

 株式投資で失敗してしまう理由によくありがちなことは、安易にリスク(投資資産の価格変動)を取りすぎていること、投資する商品への投資額を間違えていることが挙げられます。実際に私のこれまでの経験上、投資で大きな損失を出している人は投資した商品のリスクをしっかりと理解できていないのに大きな資金で投資をしているケースが大半です。

 誰かに勧められたり、誰かがおすすめしていたりする商品だから投資するのではなく、投資する商品の仕組みやリスクを分かった上で投資することが大切です。ハイリスクハイリターンの商品ほど、投資金額を抑えたり、タイミングを分けたりして購入することが重要になります。

 積立投資が資産形成や初心者向けにおすすめできるのは、分散投資をしているインデックス投信などを対象にしており、投資金額が少額で、投資のタイミングを月一などに分散した長期投資を前提としているからです。

 投資では商品選択も重要ですが、それ以上に自分にとって適切な投資額、そして投資するなら一括なのか、タイミングを分散するのかを考慮するようにしましょう。

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