資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動を分かりやすく解説します。

お悩み

株式相場が予想外に急落!!こんな時にはどうしたらいいのか?

大城信雄さん(仮名)会社員・60歳(既婚、配偶者は専業主婦、子ども2人は独立)

 大城さんは、50代になってから資産形成のために積立投資を始めて何年かたち、ついに60歳になり退職が近づいたことで、定年後の生活について考えだしました。

 退職時には退職金代わりのDC(企業型確定拠出年金)のお金が入ってくるので、定年になったら継続雇用で働きながらも仕事の時間は減らしていく予定です。子どもたちも社会人になって独立し、持ち家の住宅ローンも完済のめどがたっています。

 積立投資やDCの運用がうまくいっており、運用資金を取り崩せば老後については健康的な生活さえできればそれほど心配はせずにすみそうと思っていました。

 そんな時に株式相場が急落し、運用資金が10%程度目減りしました。ここ数年は順調に資産が増えていて、相場が下落する時でもここまで大きく下がったことがなかったので大城さんはこのまま運用を続けていいのか不安になってきました。

 大城さんが相場の急落時にうまく対応するには何に気を付けたらいいのでしょうか?

相場の急落時にやってはいけない行動はやるべき行動につながる

 株式への投資を始めて間もない人にとって、株式相場の急落は大きな試練となります。大切なお金でうまく運用できていると思っていたある日に、あっという間に利益が吹き飛び、含み損を抱えることへの精神的な負担はかなり大きいものです。

 しかし、投資をしていくと順調な時ばかりではなく、時には相場が調整という名の下落を起こした後にまた上昇する、という価格変動を繰り返して資産が増えていくものです。そして多くの下落は思わぬタイミングで急に訪れます。

 長年投資を続けていると定期的に相場が急落することを幾度も体験することになります。コロナショックやリーマンショックのように〇〇ショックと呼ばれるほどの大暴落まではいかなくても、5~10%の下落などは株式相場にとって珍しいことではありません。

 そうした下落にも慌てず対応できるように日頃から心掛けておくことが、継続的な成果にもつながります。そこで今回は相場の急落時にやってはいけない行動をお伝えすると同時にやるべき行動をご説明させていただきます。

株式相場が急落したときにやってはいけないこと1:狼狽(ろうばい)して株式を売却してはいけない 

 日本証券業協会によると、狼狽売りとは、「株価が急落する様子を見て、保有している株式を慌てて売却してしまうこと」とされ、損切りは「これ以上損失が大きくならないように、あえて損失確定を機械的におこなう行為」とされています。狼狽売りと損切りの最大の違いは、計画性の有無とされています。

 株式投資にとって損切りは非常に重要です。個別株価の変動は日経平均株価などの株式指数のインデックス投資とは違い、個別資産の変動が非常に大きいため、軌道修正をするならしっかり対応しなければ、塩漬け(株価が大きく値下がりしてしまった株式を売却できずに長期保有してしまう状態)になってしまうからです。

 インデックス投資の場合は、個別銘柄に比べれば価格変動は少なく、株式の分散投資ができているため長期保有でも問題ないはずです。しかし、まとまった金額で買付したタイミングが結果的に直近の高値付近となり、その後急落した場合には狼狽売りをしてしまう方もいます。

 狼狽売りには計画性がありませんので、平常時であればしてはいけないことは誰もが理解できるでしょう。しかし、大切なお金が急に目減りしてしまうと「もっと損をするのでは」という感情面で判断してしまうことはよくありますので、相場は急に下落することもあると意識しておくことが大切です。