情勢混迷で金(ゴールド)上昇は継続

 振り返ってみれば、3月25日の国連安保理での米国の棄権が報復合戦のきっかけになったのかもしれません。あの後、怒りをあらわにしたイスラエルは「抵抗の枢軸」をなりふり構わず攻撃し、その攻撃がきっかけで報復合戦がはじまった、と言えなくないためです。

 米国は、リーダーとして国際世論に応じ、これまで関わりが強かったイスラエルを制御しなければならない立場にある(だからイスラエルを擁護する意味の拒否権を行使せずに棄権をした)一方、11月に大統領選を控え、米国国内のキリスト教福音派(ユダヤ人の国イスラエルを尊ぶ人々)の支持を取り付ける必要に迫られイスラエルを無下にできず、大変に難しいかじ取りを迫られています。

 大規模な戦闘を避け、防空システムを活用してミサイルやドローンからイスラエル本土を守ることが、今の米国が選択できる唯一の策なのかもしれません。その意味では、現在の情勢が、かつてのような米国を主体とした多国籍軍が相手を一掃するような大規模な戦争には発展しないと言えます。

 大規模な戦争が勃発し、情勢悪化に終わりが見える事態にはならないのであれば当面、中東情勢は現在のような緊張の糸が張った状態が続く可能性があります。このことは、下図内の金(ゴールド)に関わる短中期のテーマの一つである「有事ムード」起因の上昇圧力が、まだしばらく続く可能性があることを示唆しています。

図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)

出所:筆者作成