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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
決算レポート:レーザーテック(受注高が急回復)、アドバンテスト(SoCテスタの回復が鈍い)、スーパー・マイクロ・コンピューター(業績好調だが売上総利益率は低下)

毎週金曜日午後掲載

本レポートに掲載した銘柄レーザーテック(6920、東証プライム)アドバンテスト(6857、東証プライム)スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI、NASDAQ)

レーザーテック

1.2024年6月期3Qは、売上高2.56倍、営業利益2.82倍。

 レーザーテックの2024年6月期3Q(2024年1-3月期、以下今3Q)は、売上高622.13億円(前年比2.56倍)、営業利益263.58億円(同2.82倍)となりました。今2Q比でも増収増益でした。主力製品であるフォトマスク欠陥検査装置中心に半導体関連装置の検収が進んだと思われます。

表1 レーザーテックの業績

株価 39,750円(2024/5/1)
発行済み株数 90,187千株
時価総額 3,584,933百万円(2024/5/1)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期純利益。
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの。

表2 レーザーテック:四半期売上高

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成
注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

2.2024年6月期3Qは受注急増

 今3Qは全社受注高と半導体関連装置受注高がともに急回復しました。レーザーテックの全社受注高は2022年6月期1Qに過去最高受注高1,083.07億円を記録した後、波を描きながら減少しており、今期2024年6月期に入ってからさらに減少していました。今3Qはこれがようやく回復し、全社受注高では過去3番目、半導体関連装置では過去4番目の高い受注高を記録しました。

 受注高の中身を見ると、EUV露光装置に対応したフォトマスク欠陥検査装置「Actis A150」、そのHigh-NA対応版「Actis A300」の引き合いと受注が活発になっている模様です(「Actis A150」の価格は非開示だが推定で80~100億円/台、「Actis A300」はそれ以上の価格になると思われる)。一方で従来型の「MATRICS」シリーズ(「MATRICS X8ULTRA」は約15億円/台、「同X9ULTRA」は約20万ドル/台)の受注は増加していない模様です。

 会社側は「Actis A150」「Actis A300」の引き合い、受注がどのような微細化世代の生産ラインからなのか示していません。ただし、例えば、最先端の2ナノ、3ナノラインに向けたフォトマスク欠陥検査装置の場合、ペリクル(フォトマスクに被せる防塵カバー)を使う場合は、フォトマスク欠陥検査装置はペリクルを透過して検査できるEUV光を使う「Actis A150」「Actis A300」が使われることになります(「MATRICS」シリーズはEUV露光装置用だがペリクル無しの場合に使う)。

 また、チップサイズが大きいAI用GPUに使うフォトマスク検査にも精密検査ができる「Actis A150」が使われている模様です。これはAI用GPUは価格が高いため、フォトマスクに傷やほこりがあった場合の損失額が大きくなるためです。

「Actis A150」の引き合い、受注は半導体工場のマスクショップ(半導体工場の中にあってマスクを生産する部署)からよりも生産ラインからが多く、「Actis A300」はほとんどがマスクショップからの引き合い、受注になっている模様です。

 会社側では今後の受注高について、生成AI向け(AI用GPUとHBM)、パワー半導体向け中心に半導体設備投資が回復する動きがあり、今年後半から半導体設備投資は回復すると見ています。そのため、受注高の増加は(四半期ごとの波はあると思われますが)今後も続くと見ている模様です。

 受注高の回復に伴い、全社受注残高は2023年12月末3,804.79億円から2024年3月末3,945.82億円へ回復しました。

グラフ1 レーザーテックの全社受注高

単位:百万円、四半期ベース、出所:会社資料より楽天証券作成

表3 レーザーテックの受注高、受注残高内訳

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

3.2024年6月期通期会社予想業績は前回予想が維持されたが、上方修正の可能性も。

 会社側は前回の今期2024年6月期業績予想、売上高1,950億円(前年比27.6%増)、営業利益670億円(同7.6%増)を維持しました。この業績予想が実現すると、今4Q業績は低水準になります。ただし、例年4Qは検収が比較的多く、売上高、利益とも他の四半期よりも多くなる傾向があります。このため、楽天証券では若干の上方修正がありうると予想しており、前回の楽天証券予想、売上高1,970億円、営業利益680億円を維持します。

 楽天証券の来期2025年6月期業績予想も維持します。2024年3月末の受注残高が回復してきたこと、納期に1~2年かかる案件が多いこと、今年後半から始まる2ナノ投資、今後も大きな技術革新が続くと予想されるAI半導体向け設備投資の増加、パワー半導体向け設備投資の堅調な動きに期待できると思われることから、レーザーテックでは2025年6月期、2026年6月期と年率30%前後の増収、同50%前後の営業増益が期待できるというのが私の見方です。

表4 レーザーテックの売上高内訳:通期ベース

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成。

4.今後6~12カ月間の目標株価は前回の4万6,000円を5万2,000円に引き上げる。

 今後6~12カ月間のレーザーテックの目標株価を、前回の4万6,000円から5万2,000円に引き上げます。

 楽天証券の2025年6月期予想EPS(1株当たり利益)853.8円に対して、2025年6月期の楽天証券予想営業増益率54.4%にPEG=1.1~1.2倍とプレミアムを付けて想定PER(株価収益率)60~65倍で評価しました。受注が回復し、その中身が最新鋭の「Actis A150」「Actis A300」が多いことから、中長期の高成長に対する期待をもってよいと考えました。

 引き続き中長期で投資妙味を感じます。