日米2年金利差がドル/円の長期変動を決める最重要ファクター

 ドル/円為替の長期的な動きは、ほとんど日米金利差で説明できます。もっともよく動きを説明できるのは、2年金利差です。

 2年金利差というのは、米国と日本の2年国債利回りの差です。以下で分かるとおり、日本の金利は長年ほぼゼロ近辺に固定されていたので、米国金利が、ほぼそのまま日米金利差となっていました。ところが、日本銀行(日銀)がマイナス金利を解除してから、2年金利が少し上昇したため、日本の金利変動も、日米金利差に影響するようになりました。

米国・日本の2年金利、および2年金利差の推移:2008年1月~2024年4月(17日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 ドル/円為替レートの長期の動きをもっともよく説明できるのは、日米の2年金利差です。

ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2024年4月(17日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 2008年以降の動きを見ると、おおむね日米2年金利差と、ドル/円は連動していることが分かります。

 大きなトレンドが分かるように、上のグラフに赤矢印と説明を加えたのが以下のチャートです。

再掲:ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2022年3月(13日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【1】2008~2012年

 日米金利差の縮小に従って、円高(ドル安)が進みました。

【2】2013~2014年

 日米金利差が少ししか拡大していないのに、大幅な円安(ドル高)が進みました。2年金利の差では説明できないほどの円安となりました。日銀が異次元緩和を実施する中、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めに動いていたことが、急な円安を招きました。
 今と似た環境です。今も、FRBが急激な利上げを進める中、日銀はマイナス金利を解除したものの、大規模緩和を維持しています。

【3】2015~2018年

 日米金利差が拡大する中で、円高が進みました。2013~2014年の行き過ぎた円安に修正が起こったとみることができます。2016年に、米大統領選キャンペーンで共和党候補だったドナルド・トランプ氏(前大統領)と民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が、ともに円安を批判したことも円高材料となりました。
 トランプ前大統領が当選した後も、日本の対米黒字を問題視し続けたため、円高圧力が続きました。

【4】2019~2020年

 日米金利差が縮小するに従って、円高が進みました。

【5】2021~2024年

 日米金利差が拡大に従って、急激な円安が進みました。


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