クイズの正解:現預金が時価総額を超えるB社

 正解はB社です。B社が保有するキャッシュ(現預金35億円)が、B社の株式時価総額(25億円)を超えており、株価は極めて割安と言えます。

 A社は、資金繰りが悪く、手元資金では必要な支払いができなくなりそうな危険な状態にあるので、買収対象にはなりにくいと思います。

ネットキャッシュとは

 保有している現預金で借入金を全て返済して、なお現預金が残る状態を、ネットキャッシュと言います。B社は、ネットキャッシュです。

 B社は、短期借入金10億円を現預金35億円で全て返済しても、なお、現預金が25億円残ります。事業に必要のないキャッシュを、バランスシートに貯め込んだ状態と考えられます。

 ところで、B社の株式時価総額はたったの25億円です。B社が保有するキャッシュだけで、株式時価総額を超えています。

 ある投資家が25億円出してB社株式を100%買い取った後、B社に配当金25億円を払わせたらどうなるでしょう。配当金にかかる税金を無視するならば、25億円の買収資金を、配当金25億円で全て回収したことになります。

 配当支払い後のB社バランスシートは以下です。

出所:筆者作成

 買収資金25億円を、配当金25億円で回収した後、上記の会社が残ります。上記の会社を実質タダで手にしたといえます。

 B社ほど極端ではなくとも、日本には、実質無借金、つまりネットキャッシュの企業がたくさんあります。実質的に、極めて割安に買収される企業もあり、そういう株に「同意なきTOB」が仕掛けられることは、これから多くなると思います。

資金繰りの厳しい企業には要注意

 A社は、自己資本比率が50%と高いので、財務が良好かと勘違いしてしまいます。よく見ると、財務はけっこう厳しいことが分かります。

 A社の流動資産20億円に対し、流動負債が30億円あります。流動資産とは、原則1年以内に現金化できる資産のことです。流動負債は、原則1年以内に返済期限が来る負債です。

 流動負債が流動資産より多いので、資金繰りが厳しくなる可能性があります。このような財務に問題を抱えた企業には、投資しない方がいいと思います。

 A社は、財務だけ見るならば、買収ターゲットとはなりにくいと言えます。ただし、A社が、世界的に注目される技術とか特許とか持っているならば、話は別です。財務的に厳しくても、そうした目に見えない宝物を持っているならば、A社が買収ターゲットになることもあります。