スーパー・マイクロ・コンピューター

1.2024年6月期2Qの会社側ガイダンスが上方修正された

 2024年1月18日(木)付けで、スーパー・マイクロ・コンピューターは2024年6月期2Q(2023年10-12月期)の会社側ガイダンスを上方修正しました。それによれば、2024年6月期2Qは、売上高360~365億ドル、EPS4.90~5.05ドルになる見込みです。2024年6月期1Q決算時の会社側ガイダンス、売上高270~290億ドル、EPS3.75~4.24ドルに比べ大幅上方修正となります。

 会社側が想定する今2Qの完全希薄化発行済み株式数は5,810万株、税率は17.3%なので、これより今2Q業績の修正予想のレンジ平均値を計算すると、売上高36.25億ドル(前年比2.0倍)、営業利益3.49億ドル(同62.3%増)、当期純利益2.89億ドル(同64.2%増)となる見込みです。会社側は営業利益予想を明示していませんが、今1Qの営業外収支が500万ドルのプラス、2023年6月期通期が700万ドルのマイナスなので、今2Qの営業外収支をゼロと仮定して会社予想営業利益を計算しました。

 同じ考え方で前回の会社側ガイダンス(今1Q決算時の今2Q会社側ガイダンス)を計算すると、前回会社側ガイダンスにおける完全希薄化株式数は5,760万株、想定税率15.7%より、売上高28億ドル(前年比55.3%増)、営業利益2.73億ドル(同27.0%増)、当期純利益2.30億ドル(同30.7%増)となります。

 今回の大幅上方修正の理由は、スーパーマイクロの2024年1月18日付けプレスリリースによれば、ラックスケールのAIとトータルITソリューションの需要が強かったためとされていますが、要するにエヌビディアの「H100」搭載AIサーバーの需要が極めて強く、H100の調達も順調だったため、最先端のAIサーバーを順調に出荷できたためと思われます。

 また、営業利益率は前回ガイダンスよりも低下しましたが、これは事業拡大に伴い、人員増強、研究開発費の増強などの経費増加が先行しているためと思われます。現在、スーパーマイクロはAIサーバー売上高で世界トップの会社であり、2位のデル・テクノロジーズを引き離していると思われます。スーパーマイクロは北米の大規模データセンター向けにサーバーの単品売りを行って急成長した会社であり、AIサーバーでも単品売りが中心と思われます。今のところは、AI半導体とAIサーバーの需給がひっ迫した状態のため、AIサーバー単品売りでも業績を伸ばせると思われますが、AIサーバー市場が成熟すれば、ソリューション売りを増やさなければならない時期がいずれ来ると思われます。

 ただし、サーバーを中核としたトータルソリューションではデルの実績が大きいため、スーパーマイクロでもAIサーバーを中核としたトータルソリューション(AIサーバーにストレージ、ネットワーク機器、各種ソフトウェアを加えてワンセットで販売する)を強化していると思われます。これが経費先行の要因となっていると思われます。

表7 スーパー・マイクロ・コンピューターの業績

株価(NASDAQ) 475.58米ドル(2024年1月25日)
時価総額 25,250百万ドル(2024年1月25日)
発行済株数 58.100百万株(完全希薄化後、Diluted)
発行済株数 53.093百万株(完全希薄化前、Basic)
単位:百万ドル、ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後発行済み株式数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前発行済み株式数で計算。
注3:会社予想は予想レンジの平均値。

2.楽天証券の2024年6月期業績予想を上方修正する

 会社側は今回の上方修正では今3Q業績ガイダンスを示しませんでした。これは2024年1月29日(月)に予定される2024年6月期2Q決算発表の際に示されると思われます。

 生成AIの大ブームが続いていること、TSMCの決算でも示されたように、AI半導体の増産が順調に進んでいると思われること、2024年はエヌビディアの「H100」だけでなく、エヌビディアの「H200」「B100」(いずれも2024年前半に発売と思われる)、AMDの「MI300シリーズ」といった新型AI半導体が相次いで投入されることから、今後もこれらのAI半導体を搭載したAIサーバーの売上高が大きく伸びると予想されます。これまでの傾向から見ると、最高性能のAIサーバーが人気です。これらのことを考慮すると、スーパーマイクロの売上高は今3Q以降も前四半期比で順調に伸びると思われます。

 一方で、前述したようにトータルソリューションの強化のための経費増加が予想されますが、これは営業利益率の低下要因になります。

 また、最高性能のAIサーバーは高いので以前から会社側は戦略的な価格設定を行っているとコメントしていますが、要するに若干の値引き販売(5%未満の値引きか)を行っていると思われます。

 このため、2024年6月期の営業利益率は2023年6月期よりも下落すると予想されます。今回の楽天証券予想では、2025年6月期の営業利益率は上昇すると予想しましたが、上昇幅は小さいと予想しました。

 このような見方から、楽天証券では、スーパーマイクロの2024年6月期を売上高150億ドル(前年比2.1倍)、営業利益14億ドル(同84.0%増)、2025年6月期を売上高240億ドル(同60.0%増)、営業利益23億ドル(同64.3%増)と予想します。

 ただし、前述したように今回の会社側上方修正では今3Qのガイダンスが示されていません。そのため、2024年6月期、2025年6月期楽天証券予想については保守的に予想しています。決算電話会議では会社の現状と将来について、ポジティブ、ネガティブ両方の新しい情報が明らかになる可能性もあります。

3.今後6~12カ月間の目標株価を650ドルとする

 スーパー・マイクロ・コンピューターの今後6~12カ月間の目標株価を前回の400ドルから650ドルに引き上げます。楽天証券の2024年6月期予想EPS20.65ドルに成長性と今後の競争激化等のリスクを織り込んで想定PER30~40倍(PEG=0.5倍以下)を当てはめました。現時点では会社側の今3Qガイダンスが示されていないので、目標株価は保守的に設定しました。

 引き続き中長期での投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄ディスコ(6146、東証プライム)ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI、NASDAQ)